何年も前、僕は金髪でドレッド・ヘアーにしていた。
知らない人には意外だろうけれども、していたものは仕方がない。
で、そういう頭にしていると、世の中ってものがよく見える。
あからさまに嫌悪感を抱く人とか、思いっきり馬鹿にする友達とか…色んな視線を感じられる。
単純に、世俗というのは先入観が強く偏見が先立っている、といいたい。
人間の中身や物事の本質なんて後回しなんだ。

名は体を表すというけれども、それでも人を見かけで判断してはいけない。
僕の学生時代の友達に、青い瞳の女の子がいた。
金髪で背も高く、どうみても西洋人に違いなかった。
どうみても西洋人に違いなかったのだけれども、やはり人は見かけで判断してはいけない。
日本語しか喋れない場合もあるんだな、これが。
彼女はスウェーデン人の母親と日本人の父親を持つ、double（half？）だったんだ。
ソフィー・マルソーみたいな顔をしておきながら、ナツコという名前だった。
一度口を開くと、もう大阪弁をベラベラと…。

ナツコは僕の友達の彼女でもあった。
なので僕もよくランチを一緒に食べたりしていた。
ある時、その友達の浮気がバレてしまったことがあった。
僕も巻き込んで、一気に修羅場と化してしまった。
ナツコは学生食堂で、大きな声でこう言った。
「あんたなぁ！」
どう見ても西洋人なんだけれども、中身は大阪人なのである。
「わたしの目の黒いうちは、浮気させへんでっ！」

きっとその瞬間、僕は目を白黒させていた、と思う。