結局のところ、観ていない。
TV版の“ザ・シンプソンズ”なら大好きなんだけれども…。
風刺が効いていて、なおかつ愛の残るあの感じや、日本語の吹き替え陣のレベルの高さといい、とても愉しい。
例えば、ホーマー役が大平透さん（ハクション大魔王とかの人）なんだけれども、もうハマり過ぎなのだ。
実は“ザ・シンプソンズ”が大好きだから、FOXチャンネルが映るようにケーブルTVの契約をしたくらいだ。
なのに何故、僕は映画館に観に行かなかったのだろう。
それにはちょっとした理由がある。

アメリカで15年も続いて絶大な人気を誇るアニメーション、“ザ・シンプソンズ”がやっと映画になった。
公開と同時に、全米では初登場トップの興行収益を記録した。　
この映画は昨年末から日本でも公開されていたのだが、どうもモチベーションが上がらなかったので観ていない。
理由は2つ。
声の吹き替えがいつものTVの声優陣ではなく、多数の有名タレントが吹き替えを担当していたからだ。
これは、日本のTV放送でこのアニメーションのファンになった人間には、信じられない出来事なんである。
といっても仕方がないので、吹き替えなしの字幕で観ようとしていたら、これが東京の1カ所でしか上映がない。
本来はTVの吹き替えのあの感じで観たかったので、無理して東京まで行く気もせず…。

で、僕だけかと思っていたら全然そんなことはなくって、どうやらFOXはすごい反感を買っていたみたいだ。
ネット検索してみると、あちこちに抗議サイトや掲示板が立ち上げられている。
しかもその多くは、ネット上によくある子供じみた中傷の文章ではなく、
あくまで大人としての抗議だったので安心した。
タレントの起用は多くの場合、会見や舞台挨拶がスポーツ新聞やワイドショーのネタになるから、というのが理由だ。
その事情も解らなくはないけれども、作品にプラスになった例なんて皆無だろう。
特に“ザ・シンプソンズ”のファンの人は大人が多いだろうから、安っぽい市場戦略は当然のように逆効果である。
「よし、15周年記念にお寿司食べに行こう！」といわれて回転寿しに連れて行かれたら素直に感激できないだろう。
だって、普段はお寿司屋さんでお寿司を食べている状態なのだから…。

そんなだから、日本では観客動員数も収益も予想より低かったみたいだ。
この作品が日本人に「浸透していない」から、この結果なのではない。
「浸透している」からこそ、“ザ・シンプソンズ”を好きな人は観に行かなかったのだ、と思う。
マージ役の一城みゆ希さんのブログによると、この映画のＤＶＤ版はレギュラーの声優陣が担当するそうである。
それでは逆に、吹替版映画の立場はどうなるのか？
FOXだけに「狐につままれたような」って洒落ている場合じゃないな。