ある人から間違い電話の話を聞いた。
内容はまちまちらしいが、中には失礼なくらい確認する人もいるという。
今かけている電話が間違い電話だというのは間違いではないのか？みたいな。
そんな応酬が何回も続くらしい。

僕の携帯電話にあった間違い電話。
非通知着信なので無言で出ると、
「もしもし、誰？」
こちらが訊きたいくらいだ。
中井です、と答えると、
「ふん。」
と言って切ってしまった。
失礼な奴だと思っていると、すぐにまた非通知でかかってきたので出てみると、
「何？」
いやいやいや。
これには思わず笑ってしまったけれども。

友達にこの話をしたところ、こういうのは間違いではなくてイタズラ電話というらしい。
間違いやイタズラじゃないけれども、携帯電話でよくあるのは忙しい時にかかってくることだ。
それもそんな時に限って大事な内容だったり、のんびりした人から連絡があるものだ。
このタイミングが悪い種類の電話を僕は“場違い電話”と呼ぶ。
なにも電車の乗り換えのタイミングでかかってこなくっても、みたいな。

駆け出しの頃、若手のミュージシャン同士でレストランの仕事をしていた。
ジャズなんだけれども、ライヴというよりはお店のBGMといった感じの扱い。
ある時、演奏中にピアニストの携帯電話が鳴った。
信じがたいが、彼は携帯電話を電源も切らずにピアノの上に置いていた。
しかも、彼は”場違い電話”の対処を間違ってしまう。
こともあろうかその電話に出てしまったのだ。
「もしもし。今、演奏中やねん。」
早速、彼の仕事が無くなったのは言うまでもない。