先日、こんなことを言ってしまった。
「僕、最近ね、女性に興味がないんですよ。」
喋っていた相手の表情が強張（こわば）った。
「え…。」
もう手遅れなのである。
その男の人の顔は見る見るうちに引きつってゆく。
意図せず、完全にオカマと勘違いされてしまった。

僕は知り合いの人とお酒を飲んでいた。
どちらかというと、知り合いとはいえ、あまり気心の知れていない関係だ。
半分は接待みたいなものだったけれども、二人で飲みに行くという状況に。
「やっぱりミュージシャンてのはモテるんでしょう？」
「さぁ、人によるんじゃないですかねぇ。」
「じゃぁ中井君はどうなの？」
「うーん。」
「またまた。芸は身を助けるじゃないけど、目の前でギター弾けば一発でしょう？」
「うーん。」
こんな会話がしばらく続いた。
多少のうっとうしさも手伝って、つい言ってしまった。
「僕、最近ね、女性に興味がないんですよ。」
で、冒頭の緊張感あふれる状況となってしまった。

僕の人生なんて薄っぺらいが、それでも色んなことを経験してきた。
その途中で、女性の感情的で軽薄な性質も必要以上に知ってしまったかも知れない。
無智ですぐ扇動されるくせに、徒党を組んではお互いに邪魔し合って、男次第でどうにでも変わる。
概して、男から見た女性ってそんな生き物だ。
これが一人一人の“女の人”となると、まだまだ興味は尽きないから困ってしまう。
ま、言い方なんだけれども、“女の人”というとその人の個性を含んだ表現に聞こえる。
男性に対しての女性、性別としての女性。
そういう意味で、僕は漠然と“女性”に関して興味がなくなった、と言った。

さらに先日、あまりに積極的な女性だったので、つい言ってしまった。
「僕、最近ね、女性に興味がないんですよ。」
喋っていた相手の表情が強張（こわば）った。
かなり失礼なんだけれども、彼女は全然タイプじゃなくって…。
なので完全に意図的に、勘違いをしてもらった。
変な噂が流れなければ良いのだが…。
それにしても「ゲイは身を助ける」とはよく言ったものだ。