○野屋に入った。
牛丼を食べるためである。
たしか、午後の３時くらいだった。
休日のオフィス街は人が少ない。
しかもこんな中途半端な時間帯では特に。

店内に居るのは、僕と店員と２人の客だけ。
客は、50代くらいのタクシー運転手と、
離れて、同じく50代と思われる、おばさん。
それぞれは、別々の客である。

おばさんは、綺麗な服装なんだけれども。
何故か、少しくたびれている感じのする。
もう既に、牛丼の大盛は食べ終わっている様子。
なのに、ニヤニヤして座っているまま。

タクシーの運転手は、愉しんでいる。
牛皿（牛丼の具だけ）と並ご飯、漬物と味噌汁にサラダ。
○野屋にしては、あきらかに贅沢なのである。
しかも、卵も注文していて、ご飯を卵かけご飯にして食べている。
キャーキャーと、心で叫んでいるのが分かる。

と、日雇い労働者風のおっさんが１人で入ってきた。
これも50代らしく見える。
「％‘％＆！＊P：＊’。」
何を言っているのかよく分からない。
「％‘％＆！＊P：＊’。」
モゴモゴしていて何か聞き取り難い。
「％‘％＆！＊P：＊’。」
たまらずに、店員さんが、
「ぎゅ、牛鮭定食ですか？？」
とカマをかけた。
すると、そのおっさんは、
「お前なぁ、耳悪いんかぁ！」
と、それはハッキリした口調で言った。

おばさんはまだニヤニヤしていた。
僕が食べ終わる頃、遂にそのおばさんが口を開いた。
「大盛、おかわり。」