チョコレートは好きですか？
と質問されて、素直に“はい”とは言えない。
チョコレートのことを、100％好きじゃあないから。
嫌いではなくて、“ちょこっとだけ好き”なのだ。
む〜、意図せず“チョコ”とかかってしまった。
本意じゃないのに、駄洒落になりやすい所も困る。

僕は自分でチョコレートを買う事が、まず、無い。
中井家では、チョコレートを食べる習慣が、無かったからだ。
なんちゅう家だ、と思われるかもしれないが、事実だから仕方がない。
チョコレート以外にも、チーズやゼリーだって食べない家だったのだ。
両親に至っては、パンにバターを塗らない人種でもある。
食生活＝文化水準だとしたら、まるで未開の地みたいな家だった。
そんな中井家の感覚は、当然デリカシーの無さに現れ、思春期の僕の心を破いた。
つまり僕は、バッファロー66のビンセント・ギャロみたいな環境で育てられた。
今度、実家に行った時には、冷蔵庫に“青カビチーズ”を入れといてやろう。

バレンタインデーにチョコレートを貰うのは好きですか？
と質問されたら、迷わず“はい”と言える。
小学校の時、クラスメートから、初めてバレンタインにチョコレートを貰った。
家族に見付からないように、学習机で勉強するフリをして、こっそりと食べた。
まぁ、別に見付かっても悪い事をしている訳ではないから良いのだけれど、
大阪の親というのは、ここぞとばかり過剰に冷やかすので、タチが悪い。
とても甘くって、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しかった、と記憶する。
ちょうど初恋ってヤツが、もう少し、ほろ苦いのに比べて。
そういえば、初めてチョコレートをくれた女の子には、特に返事をしていない。
その頃はバレンタイン・デーが告白する日って知らなかったからなぁ。

僕は学生時代に、義理チョコならぬ人情チョコというのを貰った事がある。
当時付き合っていた女の子が、何故か、チョコレートをくれなかった。
おそらく僕が、“けっ、チョコレートなんか…”などと、子供みたいな事を言ってたんだと思うけれども。
で、そんな僕を勝手に可哀想に思った友達の彼女が、人情で僕に手作りチョコレートをくれたのだ。
しばらくして、その事が原因かどうかは知らないが、友達は彼女と別れた。
結果的に、なんとも後味の悪いチョコレートだったなぁ。

今年も人から義理チョコを貰っておいて、なんなのだけれど、
バレンタインに男は、チョコレートそのものが欲しい訳じゃない。
“チョコレートよりも、ずっと甘いもの”を期待している。
そんな事を言う、僕の考えが一番“甘い”んだろうけれども。（笑）