手を繋いで歩く老夫婦って素敵だと思う。
腕を組んでいる若いカップルもいい。
妻のほうが半歩下がって歩く夫婦もなかなか。
二人して出掛けるというのが、そもそも仲睦（むつ）まじい。

恋と愛は違う。
それぞれ別の言葉なので、もちろん意味も違う。
恋することは10代でも出来るけれど、
愛することは20代からの精神状態のように思う。
逆にいうと、人を愛せるようになってやっと大人になる、とも考えられる。
まぁ、年代は単に目安なんだけれども。

恋が壊れやすいのに対して、愛は壊れにくい。
恋は陶器みたいなものなので、相手の浮気でも発覚しようものなら、
手から滑り落ちたが如く、粉々に割れてしまう。
愛は“ひび割れ”たりはするが、すぐには割れない。
なので修復の可能性を残せるほどに柔軟性があるものだろう。
それが、プラスティックかセラミックか何かは分からないけれども、
いつの時代も、そのカタチは進化し続け、最新の素材をして現在進行形で存在する。

恋は裏切るけれども、愛は裏切らない。
恋の特徴が、相手の良い所のみを評価する傾向にあるのならば、
愛は、ダメな所も含めて受け入れられる容量の大きさが特徴か。
これを拡大解釈すると、愛には死別以外の別離はないことになる。

先人達の言葉を拝借すると、愛は“奪うものではなくて与えるもの”だという。
しかも、その見返りを期待してはいけないそうな。
無償で与えられる感情こそが、愛というものらしい。
もし、万が一、奪い合うつもりなのならば、
どうやらそれは“惜しみなく奪う”ものでもあるらしい。

恋という字は、下の“心”を入れ替えると“変”という字になる。
“変”の下にある文字の意味は知らないけれど、“変”という字にくっ付く奴なので、
きっと肯定的な良い意味ではあるまい。
“恋人”を書き違えて、“変人”と書いてしまった事がある。
実家の親に、恋人ならぬ“変人”を紹介したら、さぞ驚かれることだろうな。
残念ながら、恋というものは、“変”とは合い入れない。
一方、愛という字は、“心”と（読み方は知らないが）“変”にも成り得る字の、
その両方を、“受ける”という冠で抱擁してしまっている。

愛＝尽くす、とは違う気がする。
恋の場合は、一方通行でも片想いでも、恋は恋だ。
しかし愛が成立するには、一方通行じゃ無理がある。
愛は双方向性のものなんだ。

マンションを買ってあげたり、ホストに貢いだり。
心の隙間を埋めるのには十分な安堵感を得られると思う。
人それぞれなので、僕は肯定も否定もしない。
肯定も否定もしないけれど、いかにも血行が悪そうに思える。
つまり、血の通っていない感じがする、と言いたい。
愛と性欲の区別もつかない、そんな不器用な男女を見ると、何故か悲しい。
素直なのか、歪んでいるのか、よく分からなくなる。
ま、別に、今に始まったことじゃない。

ごちゃごちゃ考えていると、もっと直情的に生きたくなる。
中学生の頃みたいに、ドキドキしっぱなしの恋を大事に想う。
そしてそれが、胸の熱くなるような愛に変わってゆくのを感じたい。
そんな気分の時に、冒頭の“手を繋いで歩く老夫婦”なんかとすれ違うと、
自分もああいう風な関係を築きたい、と素直に憧れる。

“恋と変”は合い入れないけれど、“恋と愛”は違うものゆえに、融合し調和する。
そうでなければ“恋愛”なんていう便利で素晴らしい言葉は存在しない。
この恋と愛の割合、“恋愛ブレンド”具合が、きっと大切なんだ。
人生の休憩時間に、美味しいお茶を淹（い）れるためには…。