どうにも治らないことがある。
いつかは治るだろう、と思ってそのままにしておいた。
すると大人になっても、まるで治らないではないか。
実のところ、治す気があるのかないのか僕自身もよく分からない。

子供の頃、よく泣いた。
痛かったり、悲しかったり、寂しかったり、楽しすぎたりして。
大人って泣かない生き物だと思っていた。
まぁ、そう見えていただけなんだけれども。
とにかく“大人＝泣かない”のが普通だと思っていた。

近頃また、なんでか涙もろくなってきた。
別に、足の小指を打って痛いから、って泣いたりはしない。
そんな時には、どちらかというと、一人で不気味に笑っている。
人間って痛すぎると、一周回って逆に笑ってしまうから不思議だな。

映画を観ては泣いている。
ドキュメンタリーを観ては泣いている。
探偵ナイトスクープなんか、小ネタ集以外は多かれ少なかれ涙している気がする。
道でヨボヨボの老犬とすれ違った日にゃ、もう号泣モノなんである。

いつまで経っても、泣きそうなくらい字が下手だ。
大人になれば勝手に上手くなると思っていた。
今思えば大学受験の頃が一番きれいな字だったな。
それをピークに、だんだんまた汚くなっている気がする。

字が上手だと単純に賢そうな印象に映る。
賢くないから字が下手なのか、字が下手だから賢くないのかは難しい。
こういう話をすると、
「気にしすぎですよ（笑）」
となるんだけれど、その直後に相手は絶句モノなんである。

外であまり新聞を読みたくない。
何故なら僕の読み方は子供のままなので恥ずかしい。
どう子供のままかといえば、新聞を決まって後ろから読んでしまう。

TV欄から始まって、三面記事のページへ。
そして記事よりも先に4コマ漫画を。
週刊誌の広告読んだり、株式は飛ばしてスポーツ面へ行ったり。
そんな調子でどんどん遡（さかのぼ）って前のページへ。
目に付いた記事を中心に、いわゆる“ななめ読み”してゆく。

僕の4コマ漫画の読み方は少し変だ。
意外かもしれないけれど、その日の漫画の内容はあまり重要じゃない。
じゃあ何で読んでるんだ？
しいていえば、日々の連載における出来不出来のムラを感じたいから読んでいる。
ムラというかバランスの妙というか。
150Kmの直球ばかりじゃなく、ボールを散らせたり緩急をつけた投球術に魅了されるが如く。

とにかく正面から読んでいないので、他人に気付かれると恥ずかしい。
しかも4コマ漫画の読み方ひとつ取っても正面とは言い難い。
かなり斜交（はすか）いな読み方だ。
ちょうど桂枝雀さんの落語の時の座り方みたいに（笑）
僕はこれを名付けて“ななめ後ろ読み”と呼んでいる。

結局、こんなどうでもいい事をソレっぽく書く性質（たち）が一番治らない。