ぽかぽかと暖かくなってきた。
気が付けば桜も満開だ。
みんなの表情も明るい。
もうすっかり春の“それ”なのである。

まだまだ季節の変わり目。
昼は暖かいのだけれど、朝晩は冷え込む。
体温調節が難しい最近だ。
紺のセーターに黒のコーデュロイ・ジャケットで出かける。
寒いからといって、不用意にこういう格好をしているとなんか浮く。
もっと薄めというか、明るめの色彩じゃないとテンションが釣り合わないから。
どうも春の“それ”じゃない。

お気に入りのお店のおネエさんが涙目だった。
花粉症の人には辛い季節なんだ。
これも春の“それ”だろうな。

花より団子のお花見シーズン。
お花見はいいんだけれど、マナーの無さが気に入らない。
人って群れると何故、いい加減になってゆくのだろう。
泥酔して喧嘩して怪我をしたり、中には逮捕者まで出るという。
宴が終わり、去った後はゴミの山。
ちょっと残念だけれど、間違いなく春の“それ”だな。

電車から望める桜の木々が美しい。
気持ちが切り替わって初々しく感じる。
新入生でもないけれど、新年度に改めて襟を正したくなるような。
嗚呼！春の“それ”みたいな。

車輌の端と端だったが、女の子が男にからまれていた。
女の子は年の頃なら18、9才あたりか。
男は奇声を発しながら腕を掴んでいる。
最近あまり見なくなったタイプの人だったんだけれども。
つまり、なんというか、その、正気ではない感じだった。
僕が子供の頃はもうちょっと多めに、しかも身近にいたような気が。
春の“それ”かどうかは知らない。

たまたまその車輌にはお年寄りとオバサンしか乗り合わせていなかった。
なので僕が救出に向かう羽目となった。
僕は女の子に何度も何度もお礼を言われ、抱きつかれてしまった。
彼女は泣いていたので肩を抱いて安心させるしかないと思った。
もちろん他意はない。
ま、役得というかなんというか。
もう仕方がないなぁ、みたいな。
だって春の“それ”には逆らえない。

なんやろ、このコラムは（笑）
おしまい。