先日、NHKで戦前の日本の映像が流れていた。
米軍の資料として保管されていたものが、最近になって公開されたという。
今までにも、戦前や戦中の映像というのは、観たことがある。
ただ、今までと決定的に違ったのは、なんとカラー映像だったことだ。
日本の戦前のカラー映像って、皆さんは普通に観ているものなのだろうか？
僕にとってはまったく初めての経験で、しかもかなりの驚きだったんだ。

特に気に入ったのが、銀座や丸の内といった、当時一番の“モダンな街”の風景。
銀行や百貨店が並び、貫禄のある自動車がゆったりした感じで行き交う。
着物と洋服の割合が半々くらいの、モボ・モガ時代の街の景色。
白黒映像じゃないというのは、なんと素晴らしいのだろう！
とにかく、人々の顔つきの意味が解る。
現代と照らし合わせても、間違いなくこれは日本人の表情だ。
そりゃ、当たり前なんだけれど…。
僕だけかもしれないが、モノトーンでは現実的に意味を受け取り難い。
映画っぽいというか、外国っぽいっというか、なんか他所事みたいで。
モノトーンを否定しているんじゃなくって、総天然色って感情移入し易いと言いたい。


さて、下町じゃない東京散策がしたくなって、僕の足は銀座へ向いた。
ライヴとプロモーションの合間だったんだけれども、昼間から銀座とは…。
ううむ、周りを見渡すと、どうやらマダムの時間帯っぽいな。
リュックサックを背負って歩く姿は、秋葉原のほうが似合っていたかも知れない。
路地裏趣味の僕は、銀座でも有楽町でもすぐ横道に反れる。
と、大抵、小料理屋さんが仕込みを始めていたりする。
やはり、この界隈だって例外じゃない。
この街にもいたか、とばかりに勝手口付近の老犬に挨拶する。

僕「どうも、こんにちは。」
犬「…。」
僕（東京の人は冷たいっていうけど、犬までも冷たいな。）
　「ほんだらな〜っ。（さようならの意）」
犬「あら、お兄さん、大阪の人だね？」
僕「え、分かります？」
犬「そりゃ、分かっちゃうよ。ダシ臭いからさ。」
僕「マジですか？」
犬「違うよ、ダシだってば！」
僕「はぁ…。（なんかウザいなぁ）」
犬「若い頃に大阪は出張で行ったことあるんだよ。」
僕「出張て（笑）犬のくせに。」
犬「あ、犬の世界にだって出張くらいあんだよ。」
僕「って、おもいっきり鎖につながれてますやん。」
犬「あ、それ以上言うと人犬問題に関わっちゃうなぁ。」

銀座の交差点に差し掛かると、有名なデパートが目に入る。
ふと、ここで思い出した。
僕のお婆ちゃんは若い頃、デパートの店員さんだったんだ。
すっかり忘れていたけれど、目の前にある、銀座の某有名デパートの元“デパガ”なんだ。
人生をデパートで例えると、もう屋上付近にいるお婆ちゃんがシックな銀座の“デパガ”である。
年配のバーテンさんとかに言わせると、昔の“デパガ”ということは相当な美人だという。
もうすぐ地下２階食料品売場に降りるお婆ちゃんが、今でいうスッチー級の美人！？
母親によると、近所では美男美女の夫婦として有名だったらしい。
まぁ確かにキレイな面影は残っているんだけれども。

そういえば、僕が赤ワインを飲んでいたら、
「優ちゃん、それならお婆ちゃんも一口飲みたいわ。」
と言って、グラスに少量のワインを要求したことがある。
そして、グラスに1/4程度の赤ワインの分だけ、お爺ちゃんの想い出話をしてくれた。
さすが、銀座のデパガはシックでモダーンでしやう？