先日、チチ松村さんに会いに行った。
チチ松村さんとは、言わずと知れたゴンチチのチチさんのことである。
場所は‘マニラ’のCDデビュー記念ライブの会場。
＜のマド＞の次のアルバム「スマイルズ」のラフミックスを片手に。

マニラとは、オープニングアクト専門のギターデュオである。
年末の「のマドのおいしい音楽」でも客入れ時に演奏して頂いている、あの彼等だ。
この度、生ギターファンにはたまらない、なんとも贅沢な音色のCDをリリースされた。
是非また今年も、ラグタイムやハワイアンのご機嫌な生BGMで花を添えてもらおうと思っている。
そのマニラ・ライブのシークレットゲストであったチチさんに、コメントを頂戴しに行ったのだ。
何故シークレットゲストなのに知っていたかって？
それはひとえにマニラさんのお陰である。
僕とチチさんが再会出来るようにセッティングしてくれたのだ。

チチさんと顔を合わせる時というのは、ほとんどが偶然のタイミングだった。
商店街を歩いている時だったり、ツアー帰りの大阪駅の構内だったり、とあるギャラリーだったり。
その昔、吉本新喜劇にいた花紀京さんみたいに絶妙の間で現れてくださるのだ。

で、実際にチチさんを目の前にすると、毎回うまく話せなくなる。
理由は一つ、僕は緊張するからだ。
チチさんはイメージどおりの優しい人柄である。
出逢えた事を心から感激してくださるし、僕の緊張を察してフランクに話してくださる。
その気遣いがまた僕を緊張させる。
まったく、どうしようもなく小心者なんである。

本人に面と向かって伝えられる根性はないけれど、彼は僕の憧れのミュージシャンだ。
自分の世界観を持っていて、次から次へと新しいアイデアを表現される。
僕が思うに、大阪の‘大らかさ’と日本の‘繊細さ’を、
ワールドミュージックの‘壮大さ’として表現できる「茶人」なんだ。

以前にも＜のマド＞の音楽に対してコメントを頂いたことがある。
なんとも素晴らしいコメントで、かなり恐縮してしまう内容だったんだけれども。
いつまでたっても暗中模索の僕にとって、神々しい光が差した気がした。
誰が何と言おうと、これが大きな自信になっていて、今も頑張れている。

まだ学生の頃、NHKの音楽番組で、僕は自作の曲で優秀賞を受賞したことがある。
その後の打ち上げのスピーチで、作詞家の荒木とよひささんに誉めていただいた。
僕の曲に一番高い評価をつけた、とおっしゃられた。
マイクを通して僕の曲を誉めても、まったく何のメリットもなかったのに…。
そのことが単純に嬉しくて、今も頑張れている。

何気ない一言で傷ついたり、かとおもえば元気になったり、人間ってやつは忙しい。
だからこそ他人の言葉というのは重要である。
そしてそれを受け止めるというのは、単純なことだけれど、とても大切なこと。
改めて、僕は音楽で皆さんにそんなことを伝えたい、と思う。
例えば、僕の何気ない単純な一言が、あなたにとっての大切な言葉になるんだったら本望だ。

今回の「スマイルズ」用に頂いたコメントは、CDの帯に載せさせて頂くことになる。
チチさん、マニラのお二人、本当にありがとうございました。