僕はこう見えて、なかなか気が利かない。
ま、どう見えてるかさえ怪しいんだけれども。

今年の初めに、幼なじみと再会した。
折角なので一緒に飲みに行こう、という事になった。
僕みたいな風来坊と違って、彼は会社員で既婚者で子持ちである。
聞けば次の日も当然のように朝から仕事なのだ。
「大変やな。」
「何が？」
「いや、そのミュージシャンって。」
大抵の会社勤めの友達は、自分の好きなことやって羨ましいよ的なことを言う。
大変やな、なんて言われると扶養家族のいる方がよっぽど大変だと思ってしまう。
「そっちこそ大変やろ？」
「そうでもないよ、今は子供のために働くのが幸せやから…。」
もはや同い年とは思えないほど、人間の出来た奴である。
そんな彼にやってしまったのだ。
おごるだのワリカンだの言っている間に、終電が無くなってしまったのである。
気が利かないというよりは、気が付かなかったんだけど。
で結局、気が利かないついでに朝まで飲み明かしてもらうことに…うむむ。

やはりどうも気が利かない。
女の子と食事をしていて楽しく盛り上がった。
かなり意気投合したんだけれど、どうも幼なじみとの一件が頭をよぎる。
彼女とはゆっくり話すのも初めてだったし、しかも平日である。
僕は当然のように終電に間に合うように送って行く。
家まで無事に着いたらメールしてね、とかなんとか言ってさよならをする。
後で届いたメールには、そんな子供じゃないとか、鈍感すぎるとかって書いてあった。
うむむむ。

誰とかじゃなくって、気が利かない事ってある。
洗車した次の日に雨が降ったりするのは気が利かない。
僕はくせ毛なので雨が降るときを感知することが出来る。
結構な確率で感知するくせ毛アンテナの持ち主なんだ。
なのに最近、予測出来ないことが増えた。
気が利かないうえに、毛も利かなくなってしまったのかしら？
うむむむむ。